大雪山国立公園指定90周年を記念して、「大雪山・旭岳の自然を考えるワークショップ」を開催いたしました。
昭和9年12月4日に国立公園に指定されてから本年で90周年を迎える大雪山国立公園。
大雪山のこれまで・現在・そしてこれからを「大雪山の生きものと高山植物」をテーマに、
学び・考える講演会となりました。
講演に先立ち、大雪山国立公園管理事務所 所長・杉本瀬優 氏よりご挨拶を頂戴しました。
杉本氏からは、大雪山国立公園のプロフィールや指定までの歴史をご説明いただきました。
当初は国立公園の候補地に含まれていなかったこと、大雪山調査会をはじめとした各地の運動が大雪山国立公園の誕生を
後押ししたことなど、大雪山国立公園の背景を知ることができました。
最後には、「大雪山国立公園ビジョン」をもとに官民協働での管理運営推進のお言葉がありました。
第一部は、「大雪山―野の生き物の棲むところ」と題して、写真家・伊藤健次 氏によるスライドトークです。
伊藤氏が「激しい山」と称する大雪山で生活する動物たちへの憧れ、動物との出会いを通して感じる山の楽しさや自然への
新たな気づきを、動物たちの日常を感じるお写真や風景写真とともに語っていただきました。
遥か昔の大雪山での営みを証明する黒曜石や大雪山を旅した古人の書物の紹介も興味深いものでした。
また、北海道の原風景を辿るべく訪れた極東ロシアのシホテアリン山脈、そこに生きる動物たちや人々の様子、
北海道の自然との相違点のお話もありました。
伊藤さんのお言葉通り、写真とともにまるで旅をしているかのような気持ちになり、
北海道・大雪山の豊かな自然を再認識することができました。
第二部は、「大雪山の高山生態系と地球温暖化の影響」と題して、
生態学者(北海道大学)・工藤岳 氏によるご講演をいただきました。
まずは、高山帯とはどんなところか・高山生態系の仕組みとは・高山植物と虫との関係を丁寧にご説明いただきました。
ひとくくりに高山帯と言っても、その中でも積雪量や雪解け進度による環境の違いがあり、
それが高山植物の多様さを作り出しているとのこと。
大雪山で目にする可憐な高山植物の暮らしがみえてくると、さらに魅了されることでしょう。
続いて、大雪山を拠点に30年近く行われている高山生態系の研究をもとに、
大雪山で起こっている気候変動の兆候のお話がありました。
なんとなく感じていた方も多いと思われる気温の上昇や雪解け早期化による変化、
高山植物やチシマザサの分布域の変化のことなど。
それを踏まえて何が行われているのか、何ができるのか考えるきっかけになったのではないでしょうか。
ご参加いただいた皆様、ご登壇いただいた杉本さま、伊藤さま、工藤さま
誠にありがとうございました。