12月2日(火)に、あさひだけ冬季イベント「冬季遭難救助・搬送訓練」を開催しました。
北海道警察旭川東警察署(以下3名山岳救助隊)/林中さん・竹内さん・峯さん、本田さん、
Natures代表/中川伸也さんを講師としてお招きし、遭難防止対策協議会東川支部の隊員や近隣ガイド、
山岳関係者の総勢20名を超える皆さまにご参加いただきました。
前半の屋内講習では、最初に中川さんより
雪崩捜索救助に関するお話をしていただきました。
ここ最近は、雪崩トランシーバー(ビーコン)の進化によって、埋まっている場所を特定しやすくなったものの、
効率的で的確なシャベリングにより要救助者をいかに早く掘り出すかということと、
雪崩で埋まった意識不明の要救助者に対する、胸骨圧迫に加えて人工呼吸をする重要性を学びました。
続いて、林中さんより
旭岳での遭難救助活動における実際の映像を用いながら、
山岳救助隊で遭難救助にあたる際の手順や、ヘリレスキューの流れをご説明いただきました。
遭難した際は、110番と119番どちらに通報しても、警察と消防で連携を取って救助の調整をすること、
ヘリから地上にいる人を視認しずらく、特にヘッドライト等のライトの点滅や発煙筒が見やすいとのことでした。
さらに、ヘリが救助に来た際は、不用意に手を振ることが紛らわしくなってしまうこともあるそうです。
また、ヘリレスキュー注意点として、
プロペラに接触すると大事故になりかねないため近づかない、パイロットから見えないヘリの後ろ側には近づかない、
中型のヘリで、ダウンウォッシュ(ヘリのローターから発生する下向きの気流、周囲に強風を引き起こす現象)の影響範囲は
ヘリの下直径40mくらい、風速は26m/sくらいにもなることを踏まえ、
ダウンウォッシュへの備え
・雪や砂などの飛散物を受けないようゴーグルをしたり口を覆う
・装備や服を飛ばされないよう荷物をまとめる
・静電気が発生すること
を教えていただきました。
迅速な救助活動につなげるためにも、救助を呼ぶ側や周囲の人の適切な行動が大切だと感じました。
続いて、道警式低体温症ラッピングの実演と実践です。
※道警式低体温症ラッピングの紹介動画はこちら
ポイントは「密閉・保温・加温」ということで、
冬山装備でどのように代用できるかも考えながら、手順と抑えておくべきポイントを一つずつ確認しました。
後半は駐車場の横にて、雪崩捜索のうちシャベリング(雪崩に埋まった要救助者をシャベルで掘り出す作業)の実践です。
3つのグループに分かれて行ったところ、それぞれ違った結果になったことを受け、
良いところや改善点、実際の現場での立ち振る舞いなどをディスカッションし、
一秒を争う現場でどのように行動するか、考えるきっかけとなりました。
続いて、シャベリングでできた穴の中でラッピング~搬送です。
屋内とは違い狭い空間で作業をしなくてはならないため、
連携して道具の受け渡しをしたり、適切な処置を行いました。
搬送では、要救助者をケアしながらの斜面に応じた声掛けや引き方、ロープワークなど、
ただ単に引っ張るだけではいけない難しさを感じました。
最後には、ヘリレスキューのホイスト(ヘリ用の巻き上げ機で救助員を降下させる救助法)を実演していただきました。
ヘリが飛来する直前に、山岳用小型発煙筒「ポッケム」のデモが行われました。
赤い煙はヘリからの視認性が良かったとのことです。
知識だけでは想像できなかったダウンウォッシュの威力は凄まじく、
ゴーグルがなければ目を開けていられず、座らないと体勢を維持できないほどでした。
ちなみに、雪煙はダウンウォッシュによるもので、この日はほぼ無風でした。
そのなかで迅速に活動される道警の皆さまへの敬意と、日頃の訓練の積み重ねを感じることができ、
改めて救助活動にあたってくださっていることへの感謝の気持ちを持ちました。
ヘリレスキューの動画はこちらからご覧いただけます。
(2倍速です)
まずは、遭難をしないための行動が何よりも大事ですが、
遭難してしまったときに備えた準備と心構え、その時に対応するための訓練の意義を感じられた一日でした。
講師の北海道警察山岳救助隊の皆さま、中川さん、
ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました!
今シーズンも無事に過ごしましょう。